医療現場を守るカスハラ対策の基本~説明・記録・連携で安全な環境づくりを~/約3分で耳ラーニング

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業種
病院・診療所・歯科
介護福祉施設
- 種別 レポート
医療機関におけるカスタマーハラスメントが深刻化しています。暴言や過剰な要求により、医療従事者の心身への負担が増し、安全な医療サービスの提供が困難になるケースも少なくありません。こうした状況を受け、厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表し、医療機関においても組織的な対応が求められるようになりました。
ルールの事前説明がカスハラ防止につながる
特に重要なのが、患者および家族への「事前の説明と同意」です。入院時には、診療計画書や重要事項説明書を通じて、病院のルールや治療方針、面会ルールはもとより、暴力・暴言への対応方針を明文化し、署名を得ることが推奨されます。家族に対しても、書面だけでなく口頭でも丁寧に説明し、誤解や不満が生じないようにすることが大切です。
外来においても同様に、ルールの事前説明がカスハラ防止につながります。特に、待ち時間や診療内容に対する不満がトラブルの火種となるため、「警察との連携」や「ハラスメント行為には法的措置を講じる」旨を明示した掲示など、院内での抑止策も効果的です。
職場全体の意識変革と対策の徹底が職場環境を守る第一歩に
また、トラブルが発生した際には、日時、場所、具体的な言動、対応内容、証拠の有無などを客観的かつ詳細に記録することが不可欠です。こうした記録は、トラブル後の対応判断や法的措置の際に重要な証拠となります。対応は個人任せにせず、組織で共有・検討する体制を整えることが求められます。
カスハラ対策委員会の設置や、行政・警察・ソーシャルワーカーとの連携により、継続的なトラブルにも対応しやすくなります。医療現場の安全と職員の尊厳を守るため、職場全体の意識変革と対策の徹底が不可欠です。まずは現場でできるルール整備や記録の仕組みづくりから始め、職員全員で共通認識を持つことが、健全な職場環境を守る第一歩になります。
<参考資料>
カスタマーハラスメント対策企業マニュアル≪厚生労働省≫
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24067.html
病院の人事制度・組織開発と言えば、日本経営!
今回の解説
馬渡美智(まわたり みさと)
株式会社日本経営 組織人事コンサルタント
従業員数500名規模の事業所で、総務・人事業務に従事した後、日本経営入社。労務管理体制の調査・整備業務、組織活性化支援、人事制度の導入・運用支援、管理職研修、職員研修等に従事している。自治体の医療人材の流出入に関する調査も実施。社会福祉協議会、各種団体等での講演やセミナーも多数行っている。社内においては、子育てをしながら経営コンサルタントとして働くモデル人材として活躍。社会保険労務士有資格者。
株式会社日本経営
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